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家電量販店トップはまだまだヤマダ?

10 月 17th, 2013

「家電量販店トップの苦境が鮮明化してきた。15日,ヤマダ電機 は2013年9月中間期の業績見通しについて大幅な下方修正を発表。売上高は9300億円から8970億円へ減額し,営業利益は136億円の黒字見通しから一転,24億円の赤字に転落する見通し。(東洋経済オンライン2013/10/17の記事より抜粋)」

家電量販店のビジネスモデルは,ごく簡単に言ってしまえば,大型店舗の広いスペースに大量に,安く仕入れた家電製品を陳列するとともに,余ったスペースに家電製品以外のものも陳列し,安い家電製品を買いに来たお客さんに,たくさんの商品を購入してもらって利益を得るというものだ。スペースを他の外食・衣料関係の業者等に貸して賃料を得たりもしている。 店内には明るいBGMが流れており,ウキウキしてつい(後から冷静になって考えると)不要なものまで買ってしまった経験があるのは私だけではないはずだ。
扱う家電製品自体は競合他社と同じ商品なので,仕入れ,物流,販売(人件費)のコストをいかに削減するかがカギで,ヤマダは,圧倒的な販売力・データによる交渉で家電メーカーの上手に立ち,売上高で2000年に「元祖安売り王」のコジマを抜いて以降,業界のトップに君臨してきた。

ヤマダがここまで他社を圧倒して成長できたポイントは2つあると思われる。
まず1点目は2000年を境にした大規模小売店舗法(大店法)廃止という規制緩和の追い風に乗ったことだ。
1980年代から段階的に大店法の規制緩和が行われると,系列販売店にこだわらない,規模の経済性を生かした新興の郊外型企業が台頭してきた。規模の経済性を生かすとは,広い店舗スペースに家電のヒット商品を数多く陳列することを意味する。
白物家電,テレビ,エアコン,パソコン,携帯電話,スマホなどと時代と共にめまぐるしく変わる売れ筋商品にいち早く目を付けた先見の明と,それを大量に売るために大型店舗を大量出店するという他の家電量販店になかった発想で他社に先んじて成長したというわけだ。

2点目は,上記のような急速な規模拡大戦略を実現するために,転換社債を用いた巧みな資金調達を行ったことだ。
転換社債とは,予め決められた期限(償還期限)までに予め決められた価格(転換価格)で株式に転換できる権利が付された社債のことだ。平成14年の商法改正以降「転換社債型新株予約権付社債」が正式名称だが,現在も一般には転換社債と呼ばれている。 過去にヤマダが発行した転換社債では,発行で得た資金による新規出店で規模が拡大し,規模の経済性によって競争優位を得て業績が急伸し,株価が上昇するというスパイラルが起きていた。償還期限までの株価が転換価格を大きく上回り,株式に転換して売却した投資家は大儲けし,ヤマダは満期償還する必要がなくなるから,実質無借金で規模を拡大することができたというわけだ。
しかし,償還期限までに株価が転換価格まで上がらなかったら,社債を株式に転換する投資家はいないから,そのまま負債が残ることになって,財務の安定性に問題をかかえることになる。 業績が悪化したことにより,転換社債を用いた資金政策の限界が浮き彫りになった。
ヤマダにとっては,これからが正念場であるといえる。

                                                  弁護士 横尾和也


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