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大型放射光施設 SPring-8

10 月 9th, 2012

皆さんの中には,SPring-8(スプリングエイト)という施設の名前を聞いたことがある人がどれだけいるだろうか。SPring-8とは,兵庫県西部,播磨科学公園都市内にある,大型放射光施設のことだ。ちなみに,Spring-8の名前の由来は,「Super Photon ring-8GeV」である(春,バネ,泉という意味では決してない)。

角川映画「神様のパズル」のロケ地になったことでも知られているが,法律家にとっては,いわゆる「和歌山毒入りカレー事件」でヒ素(亜ヒ酸)の鑑定に用いられたことで知られている。

 
電子銃から打ち出された電子を線形加速器で1GeV(ギガ電子ボルト)のエネルギーまで加速させ,シンクロトロンという円型の加速器で8GeVまでさらに加速させて光の速度まで近づけたうえで磁場を与えると,電子の進行方向が曲がるとともに,接線方向に細く強力な電磁波(=放射光)が発生する。

発生した放射光を磁場の向きが互い違いになるように磁石を並べたアンジュレータという装置に通すことにより,波長が短く(可視光の1000分の1以下=「X線」と呼ばれる。),かつ非常に明るい光を得ることができる仕組みだ。

 
このような光を用いることで,原子レベルの物質の構造や動きを観測することができ,例えば,毛髪の内部にあるコルテックス細胞(並行なものとねじれたものの2種類がある)を観測して同細胞の分布の偏りが髪のツヤに関係することをつきとめ,髪にツヤを与えるヘアケア製品の開発に貢献したり,初期むし歯におこる脱灰・再石灰化の結晶変化を観測してリン酸化オリゴ糖カルシウムを補うと失われた結晶が再生することをつきとめ,むし歯予防ガムの開発に貢献したりしている。

 
SPring-8では,微量な試料であっても高い感度でしかも非破壊で分析が可能となる。

「和歌山毒入りカレー事件」では,鍋に残っていたカレー,現場近くで回収した紙コップ,被告人の自宅から押収したプラスチック容器,被告人の夫がかつてシロアリ駆除で使っていたドラム缶から取り分けられた缶等から検出された亜ヒ酸を分析した結果,それらのいずれにもモリブデン,アンチモン,スズ,ビスマスという四つの重元素不純物が含まれており,かつ,スズとアンチモンの含有量がほぼ同一であり,ビスマスがスズ及びアンチモンの数倍多く含まれるという特異的な組成特徴を有していることが判明した。そこから,上記の亜ヒ酸すべてが,同一の工場が同一の原料を用いて同一の時期に製造した亜ヒ酸であり,同一物であるとの鑑定結果が導かれ,被告人の犯人性を裏付ける状況証拠とされた。

 
裁判では,このように,先端技術による鑑定がなされることもある。刑事事件の弁護人としては,その鑑定の手法や内容を理解したうえで,当該鑑定結果を被告人の有罪の証拠として良いのかどうか,証拠としても良いとして,それはどの程度信用することができるのかどうかを検討することが要求される。

また,刑事事件に限らず,民事事件においても,知財分野の訴訟代理人を務める際には,原子分子レベルでの物質の構造や性質に関する技術についての争いとなることもあるから,理系の話は分からないから・・・という訳にもいかないのが辛いところだ。

 

弁護士 横尾和也

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