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福祉による更生

4 月 8th, 2014

刑事弁護をやっていると,再犯を防止するという観点からは,刑罰を科すのではなく,社会福祉によって生活環境を整えてあげる方が良いと思う事案にあたることがある。今回は,そのことを強く実感した事件をご紹介したい。

被告人(以下「Aさん」という。)は,生活保護を受けていたのだが,知的障害があってお金の管理が上手く出来ず,手元にお金が無くなると窃盗を繰り返していた(自宅はゴミ屋敷同様に物が散乱している状況であったという)。
刑事裁判にかけられるのは初めてだったため,懲役刑になったとしても執行猶予が付くことが見込まれたが,生活環境を変えない限り,また同じように窃盗をしてしまうことが強く懸念された。そこで,Aさんの日常生活を従前からサポートしてくれていた人を通じて社会福祉協議会に相談し,裁判が終わって社会に戻った後の生活環境の整備をお願いした。
弁論では,社会から隔離された場所での冷たい刑罰を科すよりも,人の温もりが感じられる場所での暖かい福祉のサポートを受けることが被告人の真の更生に繋がる旨訴えた。とはいえ,Aさんには罰金を支払うだけの経済的余裕がなかったため,罰金刑になると労役場に行くことになってしまうし,懲役刑に執行猶予が付いたとしても,執行猶予期間中に万が一再犯となると執行猶予が取り消され,長期の懲役刑に服することになってしまうため,なかなか悩ましい事案であった。

事前にAさんに知的障害がある旨伝えていたこともあったのか,担当裁判官の訴訟指揮は,(私には初めての経験だったのだが)裁判官自ら高い檀上からわざわざ証言台の前まで降りてきて,Aさんの側までやってきて質問する等,Aさんに配慮していることが感じられるものであった。
この裁判官なら良い判決を書いてくれるのではないかと思っていたところ,出た判決は,罰金刑であったものの,未決勾留日数のうち,その1日を5000円に換算してその罰金額に満つるまでの分を刑に算入してくれたため,裁判が終わると同時に刑罰を受け終わったことになった(つまり,実質的に科せられる刑罰はない)。
Aさんは,判決後にその場で釈放され,その日のうちに判決を傍聴に来ていた社会福祉協議会の担当者とともに事前に押えていたショートステイの施設まで行って入所の手続をした。Aさんは施設でとりあえず3か月間生活し,安定した地域生活への復帰を目指していくことになった。

刑務所等の矯正施設からは,年間約3万人の人たちが出所しているという。その中には,安定して地域生活を送ることが困難な状況に陥ってしまう人もいる。
その支援のため,福祉と司法がタッグを組んで「地域生活定着支援事業」を開始し,全国都道府県に「地域生活定着支援センター」の設置が進められている。刑事弁護人としての活動の段階で,こういった制度の利用を視野に入れておくことは大切だと思う。
私はこの事件での裁判官の判決を福祉への期待が込められたものだと受け取ったのだが,皆さんはどう思われるだろうか。

弁護士 横尾和也

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