春らしい陽気になり,あちこちで桜の花が咲いているのを見かけるようになりました。
こんな日は外に出かけて写真を撮り,久しく更新していなかったSNSに撮った写真をアップしようか・・・と考えている人もいるのではないだろうか。
先日,コンテンツビジネス・ラボ(CBL)が主催している「センター写真講座」のプレセミナーということで,著作権・肖像権について講演をさせていただく機会があったので,その内容の一部をご紹介しようと思う。
被写体の決定,撮影時刻,露光,陰影の付け方,レンズの選択,シャッター速度の設定,現像の手法等において工夫を凝らすことによる創造的な表現部分があれば,写真自体の著作物性が問題となることもあるのだが,被写体が著作物であった場合,写真を撮影することで著作物を複製していることになるケースが多く,そのことの方が問題であるといってよい。人物を撮影する場合には,その人物の肖像権にも配慮する必要がある。
撮影した写真を個人的に楽しむ場合には,著作権法30条に,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的とする「複製」の場合,一部の例外を除き著作権侵害とはならない旨規定されているため,問題になることはない。しかし,写真をSNSにアップするということは,サーバー(自動公衆送信装置)に情報を記録するということになり,著作権法23条に規定する「送信可能化」にあたる。
セミナーでは,写真に関する裁判例として,出版用食品広告専門の写真家の作品とそっくりな写真が問題になった事案(東京高裁平成13年6月21日判決「みずみずしいスイカ事件」),照明器具のカタログの中に書道家の作品が映っていたことが問題となった事案(東京高裁平成14年2月18日判決「雪月花事件」),パロディモンタージュ写真が問題となった事案(最高裁昭和55年3月28日判決「マッドアマノ事件」),市営バスの車体に描かれていた絵画の複製が問題となった事案(東京地裁平成13年7月25日判決「市営バス車体絵画事件」)を紹介した。
デジタルカメラによって複製した著作物のデータは,インターネット等によって,世界中の不特定多数の相手に瞬時に送信できてしまう。私的使用のための複製や引用等,著作権の制限規定を理解していなければ,意図するしないにかかわらず,万人が著作権を侵害しうる時代になっている。
講演の後,質問がひっきりなしに飛び交い,この分野に関するセミナー参加者の興味の深さを感じた。機会があれば,またこのようなセミナーで著作権についての意識を高める活動をしていきたいと思っている。
弁護士 横尾和也