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国際弁護士とはいえないが・・・(3)不動産所有権の取得時効

11 月 26th, 2016

相続時に相続人間で協議がまとまらなかった,その存在が相続人に知られていなかった等の理由から,不動産登記簿上,故人の名義のまま放置されている不動産に関する相談(同様のケースは,故人が生前に第三者に不動産を売却したが,何らかの理由で所有権移転登記手続がなされなかった場合にも起こる)が持ち込まれることがある。
当該不動産を売却する場合,買主から,所有権の名義人をいったん売主の名義にすることを要求されることが通常である。しかし,何十年以上も放置されているうちに(子の代から孫の代となり)故人の相続人が20人,30人になっていることもあり,売主は,あちこちに散らばっている相続人全員と話をしなければならないことになって,非常に煩雑である。
中には,売主に所有権の名義を移すことに対し,すんなりと協力してくれない相続人がいることも考えられる。

もし売主が当該不動産に居住する等して占有しており,20年以上他の誰からも権利を主張されていない場合には,所有権の取得時効(民法162条1項)を主張して他の相続人全員に対して民事訴訟を起こし,勝訴判決に基づいて所有権移転登記手続をする方法がある。相続人の中に全く知らない人がいる場合には,こちらの方がスムーズに行くかもしれない。
この方法を取る場合であっても,いきなり裁判所から訴状が届くとびっくりする方もいるので,あらかじめ,電話や手紙で連絡を取り,不動産登記簿の名義人を変更するために訴訟を提起することになったこと等の経緯を説明するとともに,協力をお願いしておいた方が良い。その際,「判決では訴訟費用の負担を命じられるが,こちらからは請求しないので事実上は支払わずに済む(裁判所からは請求が行かない)ので安心して下さい。」等と説明すると,当該不動産に対して興味のない人が大半なので,協力してもらえることが多い。
相続人の調査は,戸籍謄本,除籍謄本,改製原戸籍を取得して行うところ,引っ越した後住民票を移していなかった等の理由から戸籍の附票に記載されている住所に訴状が送達できない場合があって難儀することがあるのだが,あらかじめ協力を要請しておくと,他の相続人からその所在を教えてもらえることがある。

「国際弁護士~のタイトルが今回の話にどう関わってくるのか」って?
察しの良い人はお分かりであろう。そう,相続人は「あちこちに散らばっている」のである。「あちこち」とは,「世界中に」という意味である。
海外に移住してしまった相続人の戸籍の附票を取得しても,「【住所】アメリカ合衆国」等としか書かれておらず,他の相続人からの協力でもない限り,所在を突き止めるのは不可能といってよい。
所在をうまく突き止められたとしても,海外で出生した相続人は日本語を解しないことも多く,上述の協力をお願いする文書をその国の言語で作成する必要も出てくる。
訴状の送達は領事送達や中央当局送達等という特別な方法となり,送達までにかなりの時間を要する。中央当局送達の場合,送る文書の翻訳文を用意する必要もある。

このように,渉外事件を大々的に扱っていない法律事務所であっても,事件処理のために外国語を駆使しなければならないケースがある。
「そんなときは,翻訳業者に頼めば良いのでは?」という意見もあるだろうが,外注だとコストと時間がかかるという問題がある(結局,翻訳してもらった文章が正確に訳されているかどうかをチェックする必要もある)し,「弁護士とスカイプで直接話したい」という海外の方もいたりして,いつまでも「日本語しか分からない」では済ませられないなぁと思っているところです。

弁護士 横尾和也


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